抹茶タケノコ

毎週日曜に小説の感想を投稿しています。

【感想】青のアウトライン

久々に衝動買いしたラノベがくっそ面白かったので書きます。

 

fantasiabunko.jp

概要

先週(1/20)に発売されたばっかの新作ラノベ

 

画家を目指す主人公・小宮宗佑と、宗佑と同い年ながら絵画に関して天賦の才能を持つ柏崎侑里が小学5年生の頃、樫井詩子という宇宙飛行士を夢見る女の子が転校してきました。

 

3人はちょっとしたことがきっかけで仲良くなり、詩子と宗佑は異性として互いを好きになるほどまで進展しました。

 

しかし、小学5年生の3月に詩子が再び転校することになってしまい、3人はお互いの夢を叶えて再会することを約束して別れることになります。

 

それから、月日が流れ3人が高校生になった頃、侑里は絵を書かなくなっていました。

 

宗佑は詩子との約束を反故にしたことへの苛立ちと、毎日書いている自分の絵より絵筆を握らなくなった侑里より評価されないことへの悔しさを拗らせている

 

――ということがあったよ、と宗佑が語るところから物語は始まります。

 

登場人物

 

小宮宗佑

主人公。幼馴染の侑里との才能の差に劣等感を感じる画家志望の高校生

 

柏崎侑里

ヒロインその1。天才画家

 

樫井詩子

ヒロインその2。宗佑と相思相愛。

宇宙飛行士を目指す引っ込み思案な女の子。

小学5年生の頃に宗佑の小学校に引っ越してきて、その年の3月に転校していった。

 

菅原楓

ヒロインその3。

宗佑と侑里の先輩にあたる大人気女子高生モデル。

侑里の絵のモデルになろうとしたが、書いてもらえないので侑里を焚きつけるため

宗佑にの自分をモデルにしてみないかと提案する。

 

感想(ネタバレなし)

まず、驚いたのが地の文の読みやすさ。

 

物語は宗佑の一人称視点で語られますが、

彼の侑里への劣等感をじっくりと描写されていて、本当に心に迫るものがある。

語りやら描写やらで文章量が多いんですけど、読んでて苦にならずどんどん先へ先へとよみたくなる文でした。

 

それでいて登場人物の関係性と行動原理、役割がすっきりしていて非常にわかりやすく、主人公は途中で挫折しながらもある1つの情熱を持って天才に挑み続け、そのまま突き抜けていってくれるので読み終えたあとは爽快感すら覚えた。

 

久々にあたりの作品引きましたね。こいつは。

 

繰り返しになりますが、本作は才能に押しつぶされそうになりながらも抗う凡人の心情を丁寧に淡々と積み上げてると感じました。

 

何か夢中になっていることがあって、途中で挫折して、でもまだ続けている、あるいは再燃したという経験がある人。

 

そんな人にはめちゃくちゃ刺さる熱い青春小説でした。ほんとおすすめです。

 

以下、ネタバレ込の感想。

 

感想(ネタバレあり)

 

 

 

 

本作の主軸とはちょっとずれるけど・・・

 

宗佑が筆を握れなくなったとき、ヒロイン3人の立場の差別化がすごく好きでした。

 

筆を握れなくなった原因は詩子への失恋(正確には詩子の母親が連絡手段を断った)。

 

菅原先輩は自分のステージを魅せることで、宗佑を焚き付け、実際に宗佑を再び絵を書く気にはさせてくれはしましたが、あと一歩足りない。

 

最終的に宗佑を動かしたのは、侑里が(宗佑と詩子のために)再び絵を書き始めたことだったんですよね。

侑里に対して絵を書かなくなったことに不満を持っていた宗佑が、侑里に焚き付けられることで再起するという逆転の構図が非常に良い。

 

やっぱね、人を動かすのは憧れとか、悔しさとか、そういう感情なんだなって思いました。

 

凡人たる私にもすごく覚えがある。

 

義務感とか、別の分野での刺激とかでは一度折れた心は動かないんですよ。

 

まあ、私はいろんなことに手を出しまくっては途中でやめてるわけですが。

 

話を変えて特に好きだったのが菅原先輩の立場。

 

本当にいい負けヒロインだと思います。(最低な視点)

 

芸能の世界に身を投じる人間としては侑里に負け、異性としては詩子に負けるという、どちらの意味でも宗佑の一番になれない負けヒロインでありながら間違いなく宗佑に良い影響を与えている非常に良い役どころ。

 

加えて、振られても諦めず好きになってもらうために自分を磨くという姿勢も素敵。

 

やっぱ、負けヒロインを上手に描く作品は僕の心に刺さるんですわ。