今週読んだ本の感想を軽く語りつつ、
僕の好みにマッチしているかどうかの指標として以下の基準で点数をつけていきます。
10~9:文句なしに好き。10点は特に好き
8~7:気になるところはあるけど見てよかった。面白かった作品。
6~5:面白かったけど、なんか気になる、もやもやするという部分が勝る作品。
4~3:最後まで見たけど、あまり感じるものがなかった作品
2~1:最後までみても、なんか納得できなかったり、無理して最後まで見た作品
目次
基本的に題名のみ書いてますが、同名の作品がありそうな場合は著者をカッコ書きで記載します。
#7 真夏の方程式
10点
今まで読んだ本で一番好きかもしれない。
事件そのものは非常に胸糞悪いものだし、仙波含めた恭平の周りの大人たちは、客観的に見たら社会的にクズなことやってるんだけど、罪を背負った人間や大切な人を守ろうとする人の心情描写がみっちり丁寧に、わかりやすい文で描かれていた。
中学生の時に読んだ時は気づかなかったし、感じることもなかったけど、この人の分は読んでて疲れないのに登場人物の思いがずっしりのしかかってくる。
仙波の十六年前の事件の回想は劇場版ではカットされていた絵画の話も含めて泣きそうになった。
読み終えたとき、原作の面白さと読みやすさに驚いたのと同時に、劇場版への好感度も上がった。
劇場版は原作のエッセンスをぎゅっと詰め込みつつ、映像では描けない地の文による心理描写を間とか構図とか役者の演技力で、映像媒体ならではの表現技法でしっかり落とし込んでいたことに、原作を改めて読んだことで気づいた。
本当に良い映画化をしていたと思う。
最後の節で、意図せず殺人の手伝いをしてしまった(ことにうすうす気づいている)恭平の心を直接的な言葉を使わずにケアする湯川先生のやりとりは何度も読み返してしまうぐらい好き。
映画でも好きなシーンで、最近は劇場版と原作両方でこのシーンを交互に見ている。
やっぱ真夏の方程式の本質はここだよなって思った。
いい作品だわ。
#8 完璧な佐古さんは僕みたいになりたい
4点。
完璧な美少女が「完璧だから僕みたいな人間の隣にいるべきじゃない」と主人公の男の子に振られたのをきっかけに、ダメ人間になることで付き合ってもらおうと奔走する作品。
設定が非常に興味深いので手にとって見たけど、やや掘り下げが物足りない。
一言で言えば出落ちだった。
ヒロインに可愛げはあったけど、それ以外の部分は僕の心に突き刺さるものがなく、あまり関心を持つことができずに終わった。
理由を考えてみたら、主人公とヒロイン以外のキャラの存在感が薄かったことが原因だと思う。
基本的に
主人公が主人公の友達(または教師)と会話する。
または、
ヒロインがヒロインの友達と会話する。
というシーンがほとんどなのに、彼らに「会話相手として必要な言葉を返す存在」以上の魅力を感じられなかった。
これはもう明らかに僕の過失というか、僕自身の感性の問題。
そこさえ気にしなければ、話の落とし所が「主人公が完璧な佐古さん(ヒロイン)の隣にいて恥ずかしくない存在を目指す、自信をつける」というストレートで気持ちのよく、応援したくなる方向だったのは非常に良かった。好き。ラブコメは主人公の好感度が大事。
#9 夜行(著者:森見登美彦)
5点。
十年ぶりに集まった同窓生たちが、旅先で出会った怪談のような体験を語る、というお話。
途中で切るほどつまらなくもなければ、読みにくくもない作品だったんだけど、「つまり・・・どういうことだってばよ・・・?」という感想が残る。
なんとなく、雰囲気というか概要は掴めているが、正直自信がない。
そして、メンバーのお話が全て薄気味悪くて(怪談だからそりゃそうなんだけど)読んでいて不安な気持ちにさせられた。
良いように言えば考察しがいのある作品なのかもしれないけど、
考察すればきっと楽しい作品だと思えるのだろうけど、
とにかく多くの作品に軽く触れておきたいの自分には合わなかったなあ。
#10 好きな人がバレたら死ぬラブコメ
8点。
これだよ、これ! ライトノベルの良さってこういうところ! と言いたくなる作品。
いい意味でライトノベルらしい、突き抜けた面白さを持ってた。
まず細かな設定がトチ狂ってる(褒めてる)。
二十歳で教員免許持ってる先生がいたり、
(※2/20追記:持ってませんでした。無免許でした。指摘してくれた方、ありがとうございます。)
学園(高校生)の卒業生が大卒・院卒相当の評価を受けていたり、
いい意味で頭の悪そうな設定は嫌いじゃない。
その中でも特にぶっちぎりでイカれている設定が本作の主軸でもある「恋愛学」の授業である。
「恋愛学」という授業を要約すると
- 異性をドキドキさせたら加点。
- 首席は好きな異性に拒否権なしの交際を申し込む権利が与えられる
- ただし、好きな異性がバレたら退学
- 月末までに目標の点数を達成できなくても退学
という科目である。
何食べてたらこんな発想できるんだろうね?
授業という大義名分を得た生徒たちが、そわそわしながら異性の連絡先を集めようとする様も面白いし、
「君たちには異性とイチャイチャしてもらいます」という教員の説明が頭悪すぎて声を出して笑ってしまった。
だけど、この頭のおかしい設定から展開されたストーリーはかなり筋の通った作りになっていたと思う。
というかメチャクチャ面白かった。
というのも、「恋愛学」の点数と退学に関する設定がかなり練られており、登場人物の間で駆け引きを誘発させる仕組みになっているのである。
最終的には、ある人物がしっかり弱みを握って、相手を退学に追い込むか追い込まれるかという場面が作られていた。
買った時は適当に「設定のせいで素直に慣れない男女見てニヤニヤするか~」って思ってたけど、普通に面白かったね。びっくりしたわ。
特に高く評価したいのは「主人公がメインヒロインを好きになったきっかけ」と、「退学が懸かった駆け引きの決着」がしっかりと結びついた構成。
恋愛学の授業というぶっ飛んだ発想に基づく作品自体のメインテーマの裏で、
「(メインヒロインを好きになったときに)目指そうとした人間になる」という主人公自身の成長テーマもしっかりと描かき、きれいにまとめきった手腕には脱帽。
こいつはやられた。これはおもしれえわ。と満足した気持ちで読み終えましたとさ。
本当は10点与えたいぐらい好きだけど、地の文というか文体に引っかかる部分があったので、冒頭に示した基準に則ると8点という点数付けになる。
「引っかかる部分」を具体的に述べると「天才」の説明が非常に雑だったこと。
とりあえず難しそうなの調べて、これがこのぐらいの年でできたら天才だよね
みたいな、そんな雰囲気を感じた。
その説明を例えるなら「100点満点のテストで1億点取った。驚異的な頭脳の持ち主である」と言った感じ。
よく言えば「そりゃできたら確かに天才だ!」と満場一致になる説明、記号的な表現といえなくもないけど。
でも、それをチャラにするぐらい物語の主軸は面白い。
これが擁護ではなく、心の底からに気に入っているからこそのコメントであることは、
他の作品に比べてやけに感想文が長いという事実から察してほしい。
(一口どころかラーメン一杯ぶんぐらいの分量になっちまった)