抹茶タケノコ

毎週日曜に小説の感想を投稿しています。

【感想】小説の一口感想まとめ その29

今週読んだ本の感想を軽く語る記事のその29です。

 

読んだ本には僕の好みへの適合度を示す指標として以下の基準で点数をつけていきます。

 

10~9:文句なしに好き。10点は特に好き

8~7:気になるところはあるけど見てよかった。面白かった作品。

6~5:面白かったけど、なんか気になる、もやもやするという部分が勝る作品。

4~3:最後まで見たけど、あまり感じるものがなかった作品

2~1:最後までみてもなんか納得できなかったり、無理して最後まで見た作品。

0:嫌い。

X:評価不可能

 

 

#55 この恋が壊れるまで夏が終わらない

 

この恋が壊れるまで夏が終わらない(新潮文庫nex)

 

7点。

 

タイムリープ能力を持った主人公が、何者かに殺害されてしまう初恋の女性を救うために、タイムリープを繰り返す物語。

 

話の展開やら終わり方はベタというか、王道というか、ある程度予想できたのですが、

ヒロインを救うために粉骨砕身する主人公が、

救出するために切羽詰まっている様子とか

繰り返すうちにあきらめようと考えてしまうこととか、

真実を探る過程で、知りたくなかったヒロインの現実に向き合うところとか

様々な部分で苦悩する様子がよく伝わってくる描写がされており、最後まで楽しめました。

 

読み終わってからパラパラとページをめくる程度に読み返してみると、タイムリープ中に主人公が知ってしまった、知りたくなかった事実に関する伏線というか、それをにおわせるような発言もあったり、

最後の展開につながるまでの伏線も用意されていて、土台がしっかり作られたいい作品だったと思います。

 

 

【感想】小説の一口感想まとめ その28

 

今週読んだ本の感想を軽く語る記事のその28です。

 

読んだ本には僕の好みへの適合度を示す指標として以下の基準で点数をつけていきます。

 

10~9:文句なしに好き。10点は特に好き

8~7:気になるところはあるけど見てよかった。面白かった作品。

6~5:面白かったけど、なんか気になる、もやもやするという部分が勝る作品。

4~3:最後まで見たけど、あまり感じるものがなかった作品

2~1:最後までみてもなんか納得できなかったり、無理して最後まで見た作品。

0:嫌い。

X:評価不可能

 

 

#54 私、救世主なんだ。 まあ、一年後には死んでるんだけどね

私、救世主なんだ。まぁ、一年後には死んでるんだけどね (富士見ファンタジア文庫)

8点。

興味深いトリックが仕掛けられたファンタジー系バトル小説でした。

 

ざっくりとあらすじを説明すると、

最強の能力者である少年が復讐心を原動力に戦いに身を投じつつ、

命と引き換えにすべての敵を倒す力を持つ「救世主」と呼ばれる少女に

最期に青春を経験させるため、彼氏役となって日常を過ごす、

という作品です。

 

とにかく印象的だったのは、地の文による説明の取捨選択が上手なことですね。

 

少々珍しい設定のファンタジー設定ではありますが、

大筋だけをざっくりと説明して理解させてくれる文だったため、すんなり受け入れられました。

 

また、取捨選択能力の巧みさは心理描写にも同じことがいえます。

最初の戦闘シーンで主人公が戦いに挑むモチベーション、

つまり敵種族への復讐心と復讐によって埋まっていく彼の心が描かれているのですが

短い文でありながら、主人公の悲痛な思いがぎゅっと込められており、

読んでいて胸を締め付けてくれる良い心情描写だったと思います。

 

 

で、本作の最も特徴的なところは最後の展開ですね。

まあ、最後の展開が特徴的じゃない作品ってどうなの、って気がしなくもないですが。

 

帯の触れ込みには「思わずもう一回読みたくなる」といった文言が書かれているのですが。

見事に読み終わった後に1ページ目に戻っちゃいましたね。

 

無意識に1ページ目を読み返したくなる展開と、

その展開に、読み返したくなるだけの力を持たせた日常パート、および戦闘パートの地道な積み立ては見事なものでした。

 

 

総じて、シンプル文で作られたシンプルなストーリーのパーツをうまく組み合わせて、

読者の体力を奪わずに、独創的で面白いストーリーを作り上げてられていたんじゃないかなと思います。

 

それでいて、読了感もすっきり。結構な良作でした。

 

……ここだけの話、この感想を書くためにストーリーを読み返してたら新しい発見がポコポコでてきて、最初6点だった評価が気づけば8点になってました。

 

 

 

 

 

【感想】小説の一口感想まとめ その27

今週読んだ本の感想を軽く語る記事のその27です。

 

読んだ本には僕の好みへの適合度を示す指標として以下の基準で点数をつけていきます。

 

10~9:文句なしに好き。10点は特に好き

8~7:気になるところはあるけど見てよかった。面白かった作品。

6~5:面白かったけど、なんか気になる、もやもやするという部分が勝る作品。

4~3:最後まで見たけど、あまり感じるものがなかった作品

2~1:最後までみてもなんか納得できなかったり、無理して最後まで見た作品。

0:嫌い。

X:評価不可能

 

 

#53 星の王子さま(訳:倉橋由美子)

 

星の王子さま (文春文庫)

 

X:評価不能

 

童話チックな大人向け小説という感じ。

 

文体こそ子供向けの絵本のようですが、妙に遠回しに大人をチクチクと刺してくる作品でした。

 

ただ、比喩として描かれているダメな大人があんまり回りにいないのでそこまで刺さるところがなかったのも事実です。

 

めちゃくちゃ面白い! みたいな作品じゃないんですけど、どこか趣があって心には残るという不思議な作品でした。

 

……本当にこれぐらいしか書くことができない。

 

 

【感想】映画の一口感想まとめその19【県庁の星】

なんとか月一投稿をキープできている本シリーズ。

 

 

県庁の星

民間企業との人事交流研修メンバーに選ばれた県庁のエリートが、

派遣先の寂れたスーパーを立て直すために悪戦苦闘する、という作品です。

 

先に感想の結論だけ述べて仕舞えば、

後半にいくにつれてイベントの片付け方の荒さが目立って、あまり楽しめませんでした。

 

序盤は惹かれるものがあったんですけどね。

 

経費削減以外のことに関心のないせいで保健所から勧告を食らう経営者、

不正スレスレの経費削減策に対して、自分のキャリアへの心配から是正を要求する主人公(公務員)、

勧告を受けて「だからちゃんとしておけと何度も言ったのに」と憤慨する従業員。

 

序盤では、これら3つの立場を持つ登場人物の事情や考えを簡潔に伝えることができており、

映像がどの立場の視点に変わっても、胸を掻きむしりたくなる衝動に駆られました。

全員の気持ちは理解できるがゆえに、神の視点から見ると全員にイライラしちゃうんですね。

イライラしてしまうことがいいか悪いかはともかくとして、すんなり状況を受け入れられる導入でした。

 

導入の構築がしっかりしていたので、かなりワクワクしながら見ていました。

特に主人公の「現状を是正すべき」という意見に対して、

スーパーの副店長が、これまで描かれてきた主人公の思考を踏まえた上で、

主人公が受け入れると思われる妥協案を出すシーンは、

今後の展開に期待を抱かせてくれるようなシーンだったと思います。

 

副店長の案をきっかけに、主人公の出した案と現状維持案を競うことになり

主人公は自分の理想の案が思うように運ばない現実に苦しむ訳なのですが……

そこからの落とし方が、しっくりきませんでした。

 

具体的には、主人公の案のどこがダメだったのか、どう改善したのか、

という点がほとんど描かれなかったまま、主人公の案が成果を出した点です。

 

前者は仄めかす描写があったからいいにしても、

後者は全く触れられてなかったので、

なんか主人公が作業員の皆さんに謝ったら改善した……という感じになってしまい、

結果に対する説得力が感じられませんでした。残念。

 

これが尺の関係だったら不承不承ながら受け入れるところだったのですが、

その後の主人公の心境の変化と、スーパー側の変化が不必要に長いという印象を受けました。

 

主人公の心境の変化はそこそこ納得したのですが、

問題はスーパー側の変化、正確にいうと変化したことを示す描写です。

副店長が抜き打ち監査に来た保健所員から消防法を問われ、

詰まっているところに経費削減以外に関心のなかった経営者(店長)が助けに来て、つまりながらも暗唱できました!

見直したぜ店長!

ハッピーエンド!

というオチ。

 

なんか……こう、丸暗記の意味あった? 要点だけ述べれば良くない? とか細かいところも気になりますが、

店長の変化にドラマ性を用意してまで、主人公の案が現状維持案に打ち勝った理由の描写を削る必要あったの……?

というところが腑に落ちなかったです。

 

この店長、抜き打ち監査の放送が来たときは雲隠れしようとしてましたし。

 

序盤の土台を作る部分はスゴイ期待できそうだったんですけどねえ……残念。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【感想】小説の一口感想まとめ その26

今週読んだ本の感想を軽く語る記事のその26です。

 

読んだ本には僕の好みへの適合度を示す指標として以下の基準で点数をつけていきます。

 

10~9:文句なしに好き。10点は特に好き

8~7:気になるところはあるけど見てよかった。面白かった作品。

6~5:面白かったけど、なんか気になる、もやもやするという部分が勝る作品。

4~3:最後まで見たけど、あまり感じるものがなかった作品

2~1:最後までみてもなんか納得できなかったり、無理して最後まで見た作品。

0:嫌い。

X:評価不可能

 

 

#51 さよならドビュッシー

 

さよならドビュッシー (宝島社文庫)

 

6点。

 

火事で全身火傷した音楽少女が、火傷の後遺症と戦いながらピアニストを目指して猛特訓するストーリー。

 

同時に火事の真相を追いかけるみたいなストーリーも広げられるのですが、

 

ちょっとミステリ要素は蛇足だったというか締まりが悪かったと思いました。

 

登場人物の行動方針としては不自然ではありませんし、最後のどんでん返しも驚きはしたのですが、お話として必要だったかというと正直疑問です。

 

むしろ、自然かつ驚きのある展開だったからこそ、挫折から這い上がる人間の物語としては、ミステリ要素が完全にノイズだったようにすら思えます。

 

悪い言い方をすれば「ただ驚きがあるだけ」でした。

 

登場人物の動きに理屈が通っていても、ただ驚きがあるだけなので水を差されたように思ってしまいました。

 

あとシンプルに登場人物が9割ぐらい胸糞悪い性格してて読むのがしんどいです。

 

以上を踏まえて、特別つまらないわけでもなかったのでこの評価で。

 

 

#52 純白令嬢の諜報員

純白令嬢の諜報員 改編I.侯爵家変革期 (富士見ファンタジア文庫)

1点。

 

つかみはよかったのになあ……という作品。

 

好きな物語の世界に転生して、推しヒロインの運命を変えるという本筋に惹かれて手に取ったのですが、ハズレでした。

 

異世界に転生するまでは面白かったです。

 

そこからは主人公すごい! 優秀! 強い!

 

という感じに、トントン拍子に物語が主人公の成し遂げたい進んでいくので面白みにかけました。

 

最後にひと悶着あるのかなと期待して最後まで読みましたが、それもなくぬるりと終わります。

 

俺TUEEE系が好きな方にはいいんじゃないですかね。僕はそこまでこのジャンルに魅力を感じないです。

 

文体もあんまり好きじゃないです。

特に気になったのが接続詞を使わず一文に複数の内容を盛り込んでいるところ。

今読んでいる文が何の話をしているのか見失いかけることがたびたびありました。

 

つかみの面白さだけでなんとか最後まで読めた、そんな作品です。

 

 

 

 

 

【感想】小説の一口感想まとめ その25

いよいよ読んだ小説も50冊目です。

 

ということで、今週読んだ本の感想を軽く語る記事のその25です。

 

読んだ本には僕の好みへの適合度を示す指標として以下の基準で点数をつけていきます。

 

10~9:文句なしに好き。10点は特に好き

8~7:気になるところはあるけど見てよかった。面白かった作品。

6~5:面白かったけど、なんか気になる、もやもやするという部分が勝る作品。

4~3:最後まで見たけど、あまり感じるものがなかった作品

2~1:最後までみてもなんか納得できなかったり、無理して最後まで見た作品。

0:嫌い。

X:評価不可能

 

#50 とんび

 

とんび (角川文庫)

 

8点。

 

事故で奥さんをなくした主人公が一人息子を不器用ながらも育てていく過程を描いた作品。

 

正直、主人公はいかにも昭和のお父さんって感じで、頑固で意地っ張りで、精神的に非常に未熟なので身の回りにいてほしいタイプの人間じゃないですね

 

悪酔いして息子に逆切れした挙句、「親を小馬鹿にしてすみません」って謝らせようとしたシーンは正直ドン引きしました。

 

ただ、なんだかんだで根っこが善人なのでぼろくそに叩くほど嫌いに離れないというか不思議な人物像でした。まあ、身近にいてほしいタイプじゃないのは間違いないんですが。

 

本作の最大の魅力は死や巣立ちや結婚、離婚といったイベントによって、

今までそばにいて当然だった家族が家を出ていくという状況描写の解像度の高さです。

 

それでいてレパートリーが幅広い。

 

様々なシチュエーションで家族が離れていくまでの過程と感情の変化を

じわじわと、みっちり丁寧に描ききっているのでおいて行かれる側の視点に感情移入してしまい、ノスタルジックな気持ちにさせてくれました。

 

やっぱ、親子の関係を描いた作品に弱くなる年ごろなんですかね。

 

 

 

 

 

【感想】読書感想一口まとめ 実用書・専門書編 その4

実用書・専門書を読んだ感想を軽く語るシリーズのその4。

 

いわば勉強メモです。

 

読んだ本が自分にとってどの程度有益だったか、自分用のメモとして5段階評価(5が最大)をつけておこうと思います。

評価は内容の充実度を重視してます。

 

5:説明がわかりやすく、内容も充実している

4:内容は充実しているが、説明がやや難解。読んで損はない。

3:説明がわかりやすいが、内容が物足りない。読んで損はない。

2:読んで得られるものはあるが、説明が非常に難解。少々お勧めしにくい。

1:読んで得られるものはないと感じた。

 

#4 トポロジカル物質とは何か

トポロジカル物質とは何か 最新・物質科学入門 (ブルーバックス)

 

5点。

 

いわゆる物性系の本です。

 

トポロジカル物質というのは物性の中でもかなり応用的な分野であるため、

トポロジカル物質について理解するには物性の基礎を知っておく必要があります。

 

そのため、本書は物性の基礎知識に関する記述が大半をしめており、

トポロジカル物質の説明は全体の3分の1程度しかないのですが、

全体の2/3にあたる物性の基礎の説明が丁寧かつわかりやすい良書です。

 

「トポロジカル物質の説明が主題です」といったタイトルですし、

実際、最終的なゴールはトポロジカル物質の説明ではあるのですが、

トポロジカル物質への興味の如何にかかわらず、物性の入門書として非常に優れた一冊です。

 

応用物理系の学科に進んで、「物性意味わからん・・・」ってなってる人、まずは1回この本を読んでみましょうと自信を持って言えるほどだと私は思っています。

 

肝心のトポロジカル物質への理解はそこまでできませんでしたが、

物性の基礎の説明の良さだけで、この本を買う価値はあると思います。

 

まあ、トポロジカル物質の理解が及ばなかったのは、

私は仕事の休憩時間や電車移動中に黙読してるだけなので、

そこはご容赦ください……。

 

専門書は黙読だけでは限界がありますので……。

 

ちゃんとノートに書き起こしながら時間をかけて取り組めば理解できると思います。