抹茶タケノコ

毎週日曜に小説の感想を投稿しています。

【感想】映画の一口感想まとめその19【県庁の星】

なんとか月一投稿をキープできている本シリーズ。

 

 

県庁の星

民間企業との人事交流研修メンバーに選ばれた県庁のエリートが、

派遣先の寂れたスーパーを立て直すために悪戦苦闘する、という作品です。

 

先に感想の結論だけ述べて仕舞えば、

後半にいくにつれてイベントの片付け方の荒さが目立って、あまり楽しめませんでした。

 

序盤は惹かれるものがあったんですけどね。

 

経費削減以外のことに関心のないせいで保健所から勧告を食らう経営者、

不正スレスレの経費削減策に対して、自分のキャリアへの心配から是正を要求する主人公(公務員)、

勧告を受けて「だからちゃんとしておけと何度も言ったのに」と憤慨する従業員。

 

序盤では、これら3つの立場を持つ登場人物の事情や考えを簡潔に伝えることができており、

映像がどの立場の視点に変わっても、胸を掻きむしりたくなる衝動に駆られました。

全員の気持ちは理解できるがゆえに、神の視点から見ると全員にイライラしちゃうんですね。

イライラしてしまうことがいいか悪いかはともかくとして、すんなり状況を受け入れられる導入でした。

 

導入の構築がしっかりしていたので、かなりワクワクしながら見ていました。

特に主人公の「現状を是正すべき」という意見に対して、

スーパーの副店長が、これまで描かれてきた主人公の思考を踏まえた上で、

主人公が受け入れると思われる妥協案を出すシーンは、

今後の展開に期待を抱かせてくれるようなシーンだったと思います。

 

副店長の案をきっかけに、主人公の出した案と現状維持案を競うことになり

主人公は自分の理想の案が思うように運ばない現実に苦しむ訳なのですが……

そこからの落とし方が、しっくりきませんでした。

 

具体的には、主人公の案のどこがダメだったのか、どう改善したのか、

という点がほとんど描かれなかったまま、主人公の案が成果を出した点です。

 

前者は仄めかす描写があったからいいにしても、

後者は全く触れられてなかったので、

なんか主人公が作業員の皆さんに謝ったら改善した……という感じになってしまい、

結果に対する説得力が感じられませんでした。残念。

 

これが尺の関係だったら不承不承ながら受け入れるところだったのですが、

その後の主人公の心境の変化と、スーパー側の変化が不必要に長いという印象を受けました。

 

主人公の心境の変化はそこそこ納得したのですが、

問題はスーパー側の変化、正確にいうと変化したことを示す描写です。

副店長が抜き打ち監査に来た保健所員から消防法を問われ、

詰まっているところに経費削減以外に関心のなかった経営者(店長)が助けに来て、つまりながらも暗唱できました!

見直したぜ店長!

ハッピーエンド!

というオチ。

 

なんか……こう、丸暗記の意味あった? 要点だけ述べれば良くない? とか細かいところも気になりますが、

店長の変化にドラマ性を用意してまで、主人公の案が現状維持案に打ち勝った理由の描写を削る必要あったの……?

というところが腑に落ちなかったです。

 

この店長、抜き打ち監査の放送が来たときは雲隠れしようとしてましたし。

 

序盤の土台を作る部分はスゴイ期待できそうだったんですけどねえ……残念。