今週読んだ本の感想を軽く語る記事のその28です。
読んだ本には僕の好みへの適合度を示す指標として以下の基準で点数をつけていきます。
10~9:文句なしに好き。10点は特に好き
8~7:気になるところはあるけど見てよかった。面白かった作品。
6~5:面白かったけど、なんか気になる、もやもやするという部分が勝る作品。
4~3:最後まで見たけど、あまり感じるものがなかった作品
2~1:最後までみてもなんか納得できなかったり、無理して最後まで見た作品。
0:嫌い。
X:評価不可能
#54 私、救世主なんだ。 まあ、一年後には死んでるんだけどね
8点。
興味深いトリックが仕掛けられたファンタジー系バトル小説でした。
ざっくりとあらすじを説明すると、
最強の能力者である少年が復讐心を原動力に戦いに身を投じつつ、
命と引き換えにすべての敵を倒す力を持つ「救世主」と呼ばれる少女に
最期に青春を経験させるため、彼氏役となって日常を過ごす、
という作品です。
とにかく印象的だったのは、地の文による説明の取捨選択が上手なことですね。
少々珍しい設定のファンタジー設定ではありますが、
大筋だけをざっくりと説明して理解させてくれる文だったため、すんなり受け入れられました。
また、取捨選択能力の巧みさは心理描写にも同じことがいえます。
最初の戦闘シーンで主人公が戦いに挑むモチベーション、
つまり敵種族への復讐心と復讐によって埋まっていく彼の心が描かれているのですが
短い文でありながら、主人公の悲痛な思いがぎゅっと込められており、
読んでいて胸を締め付けてくれる良い心情描写だったと思います。
で、本作の最も特徴的なところは最後の展開ですね。
まあ、最後の展開が特徴的じゃない作品ってどうなの、って気がしなくもないですが。
帯の触れ込みには「思わずもう一回読みたくなる」といった文言が書かれているのですが。
見事に読み終わった後に1ページ目に戻っちゃいましたね。
無意識に1ページ目を読み返したくなる展開と、
その展開に、読み返したくなるだけの力を持たせた日常パート、および戦闘パートの地道な積み立ては見事なものでした。
総じて、シンプル文で作られたシンプルなストーリーのパーツをうまく組み合わせて、
読者の体力を奪わずに、独創的で面白いストーリーを作り上げてられていたんじゃないかなと思います。
それでいて、読了感もすっきり。結構な良作でした。
……ここだけの話、この感想を書くためにストーリーを読み返してたら新しい発見がポコポコでてきて、最初6点だった評価が気づけば8点になってました。