今週読んだ本の感想を軽く語る記事のその38です。
読んだ本には僕の好みへの適合度を示す指標として以下の基準で点数をつけていきます。
10~9:文句なしに好き。10点は特に好き
8~7:気になるところはあるけど見てよかった。面白かった作品。
6~5:面白かったけど、なんか気になる、もやもやするという部分が勝る作品。
4~3:最後まで見たけど、あまり感じるものがなかった作品
2~1:最後までみてもなんか納得できなかったり、無理して最後まで見た作品。
0:嫌い。
X:評価不可能
#73 サマータイム・アイスバーグ
9点。
夏の海に突然現れた氷山とともに現れた身元不明の謎の少女と出会った少年少女たちの夏をSF要素で味付けした青春小説です。
SFとして取り扱うテーマは突然現れた氷山とタイムトラベル、というよりタイムマシン(=タイムトラベルは可能かどうか?)なのですが、
突然現れた氷山やタイムマシン、その他SFに関する設定は丁寧に作りこまれていて、
国のえらい人たちや科学者がSF的な小難しい話をするシーンだけでも十二分に楽しめる作品となっています。
一方で、主人公一行および身元不明の少女は割と終盤まで氷山やタイムトラベルというSF要素に関わってきません。
正確にはお話の舞台は2030年代なんで近未来的SF要素はあるんですけど、それは一旦置いておきましょう。
主人公たちの物語は男女合わせて3人のグループ+突然現れた少女1人の4人で
思春期特有のひねくれた感情を抱えながら過ごしていく夏の描写が主となってます。
その物語に「突然現れた少女はどこから来たのか?」という疑問を頭の片隅程度に残っていたり、彼らの会話に突然現れた氷山の話こそ混ざりますが、
話の終わりの方までは近未来のちょっと変わった夏の様子が描かれるのみです。
ただね。それがいいんですわ。
本作の一番の魅力は地の文が織りなす夏の描写のしっとり具合。
夏の蒸し暑さと少年少女たちの感情がじっとりと伝わってくる素晴らしい文章です。
そこにきっちり作りこまれたSF的要素を加わっていて、最後まで読みたくなるほどよい高揚感を味わわせてくれました。
読了感も非常に心地よい、大変良質な作品でした。
先週感想を書いたマウントレッスンとは別のベクトルで、
こう言う作品があるからラノベ漁りをやめられないぜって気持ちにさせてくれれる、そんな本です。